スタッフY です。
私自身、色んな音源やプラグインをこれまで解説してきましたが、今回紹介するプラグインは一番解説するのが難しいプラグインだと思います。
メーカーのマニュアルにも
While the cover page of this manual defines Crystallizer as a Granular Echo Synthesizer, we think of it more as an incredibly creative, powerful, new granular-pitch-splice-forward/backward-echo-plus-space-drive- shimmer-accumulator-effect-device.
と書いてあるように、所有者の自由な発想により多才な効果を発揮出来るプラグインなんですよね。
ということで、今回は所有者のクリエイティビティを大いに刺激してくれるプラグイン、SoundToys Crystallizer を紹介します!!
多才な効果を生み出せるリバースエコープラグイン!!
Crystallizer でどのような事が出来るかについては、以下の動画を見てもらえると分かりやすいでしょう。
動画内ではループ素材を使用しBGM を作り、その各トラックにCrystallizer を使用して音の印象をガラッと変えていますね。元のループの原型を感じさせない処理すら見受けられます。
このCrystallizer を敢えて一言で表現するならば、「リバースエコーにピッチシフトをプラスしたプラグイン」と言えるでしょう。一般的な軽いエコーをかける事も出来ますし、エコーにピッチシフトを適用することでCrystallizerでしか表現出来ないような複雑な音を出す事もできます。
RECYCLE でフィードバック音をさらに加工しよう!!
Crystallizer エコーを作り出すプラグインなので、設定自体も難しくはなく、それに準じたものとなっています。
上記で言うと「SPLICE」に馴染みがないかもしれませんが、普通のディレイでは入力された音を全て繰り返すのに対して、Crystallizer では「SPLICE」で設定した音の長さ分だけディレイ音として細かく再生されると思って頂ければ大丈夫です。
つまり、「SPLICE」を短くするとグリッジ的な効果が、長くすればするほど世間一般的なディレイ音が得られます。
また、「SPLICE」の特性上、この設定値がそのまま第一のディレイタイムになります。では、「DELAY」では何を設定するのか?と言うと、その「SPLICE」で発音されるエフェクト音に対して「DELAY」で追加の第二のディレイタイムを設定するイメージです。
この時にディレイ音に微細なピッチシフトかけるだけでも、グッとくる空間処理が出来ると思いますよ。
ただ、Crystallizer の最大の特徴はそのとなりの「RECYCLE」にあります!!
「RECYCLE」は平たく言えばフィードバック量を決めるパラメータですが、普通にディレイ音が増えるだけではありません。設定しているピッチシフトの量を元にさらにピッチシフトした音がフィードバックとして返ってきます。
そして、この効果によってCrystallizer と命名されている所以のクリスタルエコーを、誰でも簡単に作ることが出来るのです!!
※Crystallizer OFF
※Crystallizer ON
上記はシンセパッドのループにCrystallizer を適用した例です。ピッチシフトで1 オクターブシフトし、さらに「RECYCLE」を上げることでキラキラとしたクリスタルエコーを足しています。
このキラキラこそ、Crystallizer のもっとも特徴的な効果と言って良いのではないでしょうか!!
今回はシンセパッドにかけましたが、ギターやシンセのアルペジオなど、色んなソースに使って頂けると思いますよ。
微細なリバースエコーにも!!
上記ではCrystallizer の最大の特徴であるクリスタルエコーについて書きましたが、何もこのような過激な処理に特化している訳ではありません。
最初に書きましたが、このプラグインは一言で言えば「ピッチシフト+リバースエコープラグイン」。その効果を最大限に引き出したのが、上記のクリスタルエコーなのです。よって、ピッチシフトによるダブリングやハーモナイズ処理、(リバース)エコーによる空間処理など、守備範囲がものすごく広いのが特徴です。
上記は先ほどのクリスタルエコーの例で出したシンセパッドのループに、今度はCrystallizer で微細なピッチシフトによるコーラスに近いダブリング効果を出してみました。
このような厚みを出す上でも、効果的なプラグインなのです!!
また、ディレイ音にかけるピッチシフトに揺らぎを出すことでエコー効果も出すことができます。
※Crystallizer OFF
※Crystallizer ON
上記はアコギのアルペジオループにCrystallizer でリバースエコーをかけた例です。ここでのポイントは、ピッチシフトのオフセットを微量加えていることで、ピッチに揺らぎが出てディレイ音にコーラス効果を演出している点です。
このようなオフセットにはピッチシフト以外にもSPLICEとDELAY があります。ここで左右のディレイ音のオフセット量(揺らぎ)を設定出来ますよ。オフセットを設定したい場合は、インプット/アウトプットセクション近くにある「TWEAK」ボタンを押してくださいね。
また、フィードバック自体にも複数のモードがあり、設定を変えることで色んなディレイ音が楽しめます。
※FEEDBACK MODE 「MIXED」
※FEEDBACK MODE 「ピンポン」
上記はフィードバックモードを切り替えた時の聞こえ方の違いです。上記では左右のディレイ音が足された状態で出力されるモードと普通のピンポン処理のモードです。目的にあったモードを選択することで、より多才な音作りが出来るでしょう!!
プリセット!!プリセット!!プリセット!!
とにかく守備範囲が広く、応用することであらゆる場面で使うことが出来るCrystallizer。所有者が変態であればあるほど、その効果がいかんなく発揮されるプラグインだと言えますが、もしかしたら、自分は感性に乏しいからCrystallizer を扱いきれないと思われている方もいらっしゃるかもしれませんね。
ただ、その点は心配いりません!!SoundToys というメーカーはこのような変態(もちろん、褒め言葉です。)の集まりなので、我々にイカしたプリセットを膨大に託してくれています!!
ハッキリ言って、プリセットの数がハンパないです!!もちろん、全部音楽的に使えるものばかりです!!ソースによりもの、エフェクト効果によりもの、それぞれ膨大に揃っています。
毎回書いていますが、SoundToys の良いところはプラグインだけで勝負している訳ではない点です。そのプラグインで出来ることをきちんと提示してくてる、そんなメーカーだからこそ僕はSoundToys が好きなんです。
決して製品丸投げではなく、誰でも楽しく遊べる手段を用意してくれる。そこにSoundToys の音楽をこよなく愛する姿を垣間見ることが出来ますね。
と言うことで、今まで僕が説明した事は全部ムシしてもらって構わないので、プリセットを色々選んで遊んでみてください!!そして、適当につまみをいじってみてください!!このプラグインの楽しさ、奥深さに気付くと思いますよ。