スタッフY です。
ミックスを終えた楽曲を聞き返してみると、どうも物足りない。そんな感覚を覚えたことはありませんか?その原因は色々あると思いますが、その中のひとつとして倍音の不足が考えられます。
よく「アナログライクな味付け」などと言われますが、パートひとつひとつの味付け自体は微細であっても、それらがミックスで合わさると楽曲が生き生きしてくるんですよね!!
プロとして活躍されている方々は、この倍音の調整が絶妙だと言えます。
そのようなことから、エフェクトのジャンルの中でも倍音を付加するモノはとても人気があり、人それぞれお気に入りのプラグインをお持ちでしょう。ただ、人気があるということは、それだけ数多く世に出ているということ。一体どれを選べばいいのか迷ってしまうかもしれませんね。
そこで、私スタッフY が自信を持ってオススメしたいのが、今回紹介するSoundToys Decapitator です!!
Decapitator で倍音付加の全てをカバー出来る!!
元々、以前からあるSoundToys のプラグインの多くにはアウトプットの段階でアナログ機器のサチュレーションを付加する機能が付いています。そのことは、以下のTremolator の記事内で書き、その機能を絶賛しています笑。

Decapitator はサチュレーションを付加する機能を独立させて欲しいというユーザーからの要望で開発がスタートしたらしいですが、そこは音楽大好き集団SoundToys。ただ単に独立させるのではなく、あくまでも音楽的にどのようなケースでも対応出来るように、最強のサチュレーションプラグインとして作り上げました!!
魔法のような味付けから過激なドライブまで!!
まず、このDecapitator では画面下部のSTYLE で5 つの異なるサチュレーションのキャラクターを選ぶことが出来ます。それぞれ有名な機器をシミュレートしており、キャラが大きく異なるのが特長です。
この5 つのSTYLE がどれもこれも素晴らしい!!サチュの質感はもちろん、音の明瞭感や深く突っ込んだ時の暴れ具合など、それぞれが本当に特長的です。正直、プラグイン5 つ分の価値があるんじゃないか?と思うくらいです笑。
「深く突っ込んだ時」と書きましたが、Decapitator ではDRIVE コントロールによってDecapitator に突っ込む量を決めることが出来ます。
これによって、味付けのような僅かなドライブ感から深く突っ込んだ大胆な処理まで行えます。ただ、人によってはもっと過激に歪ませたい!!という方もいらっしゃるかもしれませんね。
そこで用意されたのが、PUNISH ボタン!!
このPUNISH をON にすると、より過激な歪みを得ることが出来ます。感覚的にはブースター的な動作に近いと思います。(マニュアルには20db のインプットゲインの増加と書かれています。)
過激な歪みは単にうるさくて耳障りなだけってことが多い中、このDecapitator はPUNISH をON にして歪ませても何故か気持ち良い。やはりアナログ機器をきちんとアナライズしてシミュレートしているからこそ、この気持ち良さが出るんだろうと感じています。
考え抜かれたトーンコントール部!!
Decapitator は単に歪ませるだけではなく、トーンコントールによって音の明瞭感などの調整が行えます。
トーンコントール部は左からローカット、音の明瞭感を決めるTONE、ハイカットの3 つに分かれますが、実はサチュレーションによって歪んだ音にかかるトーンはハイカットのみです。ローカット、音の明瞭感を決めるTONE はサチュレーションの手前で適用されます。
これによって、そのまま突っ込むとキックのローがブーミーになってしまうドラムであっても、サチュがかかる前にローカットとTONE による明瞭感でブーミーになるのを回避する、という使い方が簡単に出来る訳です。
逆にハイカットは、ドラムを突っ込んだ時に金物がキンキンする場合にカットするのに最適なように、サチュレーションの後段に付いていると言えます。
ドラムで説明しましたが、このようにトーンコントール部ひとつ取って見ても、決してただ単に機能として付いている訳ではなく、サチュレーションが一番うまく機能するように考えられて付けられています。
また、SoundToys はユーザーのやりたいことをよく熟知している。そのことがよく分かるのが、ローカットにさりげなく仕込まれているTHUMP でしょう!!
このTHUMP では、アナログEQ でよくあるカットしてブーストした時のあのレゾナンスカーブに似た効果を出すことが出来ます。
トーンコントール部について長々と書きましたが、上記のことはあまり意識することなく自分の出したいトーンに調節するように使えばOK です!!サチュレーションのために最適化されたトーンコントール部によって、誰でも簡単に音の調節が出来るでしょう。
実際の使用において
「僅かに付加して味付けとして使用するモノ」と「音作りの一環として過激に歪ませることが出来るモノ」のどちらかに特化しているプラグインが多い中、記事の表題にも書いた通り、このDecapitator はそのどちらにも使えるのがポイントです。
つまり、「ミックスにおいて味付けとして使う/音作りの一環として過激に使う」の両対応ということ。これが私スタッフY が自信を持ってオススメしている理由なのです!!
では、早速音を聴いてもらいながら使い方のポイントを紹介しましょう!!
※Decapitator OFF
※ Decapitator ON
Decapitator はどのようなパートにも使えますが、分かりやすいようにドラムのループを使用しました。
まずSTYLE で好みのサチュを選びますが、今回はテープのプリアンプをシミュレートしたSTYLE A を選択。僅かに味付けする程度にとどめていますが、キックの少し歪んだ感じがすごく気持ち良いですね!!
ドラムをそのまま適用するとキックが重たくなりすぎるので、TONE をBRIGHT 方向にやや振ってキックの重みを回避しながら、MIX のパラレル処理で原音との混ぜ具合を調整しています。
この状態でブースター的な動作をするPUNISH をON にしてドライブを突っ込んでやると、過激な歪みを得ることが出来ます。
※PUNISH ON
聴いてもらえば分かるかと思いますが、過剰に歪んでいるにも関わらず耳に痛い歪みではなく、音楽的な暖かみを感じます。過激に歪ませてもアナログ感は失うことはない。これがDecapitator の素晴らしい点でしょう!!
ドラムの他に例えばベースであれば、積極的な音色加工として歪んだブリブリ感を簡単に得ることが出来ますよ。
※Decapitator OFF
※Decapitator ON
行っている処理はドラムの時と変わりなく、好みのサチュをSTYLE から選択し、トーンコントール部で音色加工してMIX でパラレル処理をしています。低域はパラレル処理で原音をメインにしたかったので、TONE をBRIGHT 方向に大きく振って低域をスルーしています。
他にも、例えばボーカルにDecapitator を僅かに適用して倍音を得て抜けを良くする、ブレイクビーツを突っ込んで過剰なくらい歪ませて音色加工するなど、色んな使い方が出来るでしょう!!
味付けにとどめる場合は僅かにドライブさせて必要であればパラレル処理をし、積極的な音色加工で使う場合は思いっきり突っ込むのがGood です。STYLE によるサチュの質感の違いも楽しんでくださいね。
「ミックスにおいて味付けとして使う/音作りの一環として過激に使う」の両対応だからこそ、色んな場面で色んな使い方が出来るプラグインだと言えます。
もちろん、音楽的に使えるプリセットもパート毎に豊富に揃っていますので、どんな方でも安心して使っていただけますよ。