Logic Pro 11が遂にリリースされ、新しい機能がいくつか追加されました。その中でも特に注目すべきは、新しい歪みエフェクトChromaGlowです。
この記事では、ChromaGlowの特徴や使い方について詳しく解説します。
ChromaGlowで音作りが劇的に変わる
ChromaGlowとは
ChromaGlowは、複数のビンテージオーディオ機器の温かみや音色変化を再現するように設計されたサチュレーションエフェクトです。
アナログ機器を通したような僅かな倍音付加から、音を汚すようなサチュレーションまで、幅広く使えるのがポイントです。
多彩なサチュレーションモデル
ChromaGlowには、以下の5つのサチュレーションモデルが用意されています。
- Retro Tube: 偶数倍音特性による真空管機器特有の温かみを再現します。
- Modern Tube: Retro Tubeよりも奇数倍音が多め、より豊かな倍音、圧縮感、より強いディストーションを提供します。
- Magnetic: アナログテープマシンの持つサチュレーションとコンプレッション特性を再現しています。
- Squeeze: 激しくコンプレッションした時に得られるサチュレーションを再現しています。
- Analog Preamp: ソリッドステートのエッジの効いたサウンドを再現します。
各モデルには「Clean」と「Colorful」の2つのスタイルがあります。「Colorful」にすることで、より激しいサチュレーションを得ることができます。また、Squeezeモデルだけ「Soft Press」と「Hard Press」の2つの設定があり、異なるレベルのコンプレッション強度が選択できます。
実際の使用例
ChromaGlowを具体的にどのように使用するのか、様々な例を見ていきます。
ドラムトラックの強化
ドラムトラックには、Modern Tubeによって明るさや艶やかさを引き出しながら存在感を出すことができます。
※ChromaGlow OFF
※ChromaGlow ON
Modern Tubeによる奇数倍音多めの豊かな倍音によって、ドラムが一歩前に出ています。楽曲の中で聴くと、サウンドの変化がより分かると思います。
※ChromaGlow OFF
※ChromaGlow ON
オケの中でも埋もれないドラムに仕上がっています。
ここでのポイントは、Bypass Belowの設定にあります。
Bypass Belowとは、設定した周波数以下はバイパスする、つまり歪ませないということ。
ドラムの場合、サチュレーションを付加すると、キックが過度に歪んでしまい、音やせの原因になります。そのため、Bypass Belowでキックを回避することで、明るさや艶やかさとキックのパワーを両立するサウンドにすることができます。
また、別のアプローチとして、プリセットを使ったアプローチも紹介します。
今回使うプリセット「Warm & Tucked」は、Squeezeモデルで「Hard Press」というスタイルを使用しているため、激しくコンプレッションされたサウンドを得ることができます。
※ChromaGlow OFF
※ChromaGlow ON
ただし、このままでは、ただうるさいだけで全く使えない音なので、MIXバランスによってパラレル処理します。
※ChromaGlow OFF
※ChromaGlow ON
いい具合に余韻が持ち上がり、存在感が出ています。楽曲の中で聴くと、サウンドの変化がより分かると思います。
※ChromaGlow OFF
※ChromaGlow ON
オケの中でも埋もれないドラムに仕上がっています。
今回は、ドラムの存在感を出すための2つのアプローチを紹介しましたが、ChromaGlowには5つのサチュレーションモデルが用意されているため、この他にも様々なアプローチが試すことができます。
ベーストラックの強化
ベーストラックには、Modern Tubeによってラインを強調したブリブリ感溢れるベースサウンドを作ることができます。
※ChromaGlow OFF
※ChromaGlow ON
ベースに気持ちいいブリブリ感が足されています。
ここでのポイントも、Bypass Belowの設定にあります。
ベースサウンド全体に倍音を付加すると、時として音やせの原因になります。そのため、ベースのサウンドの芯となる低域から中低域は歪まないようにBypass Belowで回避し、Modern Tubeによる奇数倍音多めの豊かな倍音を加えることで、ベースの太さは保ちながら気持ちいいブリブリ感を足すことができます。
また、今回はスタイルを「Colorful」にすることで激しく歪ませながら、ちょうどいいポイントをMIXバランスで調整しています。
ボーカルの存在感を出す
ボーカルの存在感を出したい場合も、ChromaGlowが活躍します。
※ChromaGlow OFF
※ChromaGlow ON
今回はMagneticを選び、アナログテープ持つサチュレーションと僅かなコンプレッションによってボーカルの存在感を出しています。歪むか歪まなないかギリギリのラインを狙ってドライブを設定、ドライブを上げると音量も上がってしまうため、Level Outを少しだけ下げて調整しています。
ボーカル単体ではさほど違いを感じないかもしませんが、オケの中で聴くと、ボーカルの存在感が増しているのが分かると思います。
※ChromaGlow OFF
※ChromaGlow ON
オケの中でもボーカルが埋もれずにしっかりと前に出ています。
今回はこれまで例として使ってこなかったMagneticを敢えて使いましたが、ギラっとした質感が欲しければModern Tube、温かみが欲しければRetro Tubeといった感じで、サチュレーションモデルを切り替えながら使ってみてください。
マスタートラックに使ってみる
最後に、マスタートラックにChromaGlowを使ってみましょう。わずかなサチュレーションを加えることで、トラック全体にわずかな持ち上がりとエネルギーを加えることができます。
※ChromaGlow OFF
※ChromaGlow ON
Retro Tubeの数倍音特性による真空管機器特有の温かみによって、中高域にかけて全体的にフワッと持ち上がっています。それにより、ステレオ感が広がっているようにも感じます。
ここでのポイントも、Bypass Belowの設定にあります。楽曲の持つパワーを保つために、低域から中低域を回避しています。
Driveの設定について、今回は効果が分かりやすいようにやや強めにかけていますが、実際に使う場合は、もう少し抑えた設定で使うことが多いです。サチュレーションを加えることでサウンドの温かさや存在感がアップしますが、やりすぎは当然音質劣化に繋がってしまいます。
ChromaGlowとWaves NLS Non-Linear Summerとの違い
Logic Pro 11の新機能「ChromaGlow」に似たプラグインとして、Waves NLS Non-Linear Summerがあります。
![](https://project0t.com/wp-content/uploads/2020/04/20200406-1-160x90.jpg)
両者の違いについて説明します。
Waves NLSはサミングミキサーとして設計されており、デジタルオーディオのトラックをアナログ風にサミングすることで、全体のミックスにアナログの特性を加えることに特化しています。
一方、ChromaGlowは、個々のトラックの音作りとして最適です。
アナログの特性を加えるというよりは、アナログサチュレーションによって、より魅力的なトラックに仕上げることに特化しています。そのため、パラレル処理やバイパスフィルターなど、音作りを行う上で必要になる細かい調整が可能な機能が充実しています。
楽曲全体にアナログ感を付加したい場合はWaves NLS、色々なアプローチで音作りを楽しみたい場合はChromaGlowを使うと良いでしょう。